虚無感。

闇を纏うようなロングコートを着た男がひとり。
ぼんやりと夜空に手を伸ばす。
その手を冷たい風が吹き抜けて行く。

「結局…」
独り言葉を漏らし溜息をつく
相変わらず男の手を掠めて行くのは冷たい風だけだった…

『幻想だったのだろうな…』
そう思って苦笑する。
手に掴みかけた何かが砂のように零れ落ちて行く感覚。

自分は独りで生きていくものだと思っていた。
今までも、そしてこれから先もずっと…
それなのに…
『誰にも必要とされていない』
『結局何も出来なかった…』
そう思うと胸に穴が開いたような虚無感を感じた。
この感覚は一体…

「本当に俺は変わったのだろうか…」
虚しくその声は夜の空へと響き渡る。
勿論答える声もある筈は無く…。

唯、時間だけが過ぎて行く。
結局同じことの繰り返し。
失った後では遅すぎる。
何もかも…。

はっきり後悔している。
俺さえ居なければ…
「さようなら…」
今更遅いかもしれないけれど…